マイケル・ムーア監督があぶり出す、米政界の腐りっぷり 映画「華氏119」(夕刊フジ)

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マイケル・ムーア監督(64)の最新作「華氏119」(公開中)が今のアメリカの現実をえぐり出している。

 就任以来、世界中を取っ散らかしているドナルド・トランプ米大統領。投票直前、米大手メディアは、トランプ大統領の誕生確率を15%とはじき出していた。一方のヒラリー・クリントン候補の当選確率は85%。ところが大番狂わせが起きた。

 しかしムーア監督はトランプ大統領の誕生を予測していた。ブッシュ大統領に肉薄した映画「華氏911」(2004年)ではカンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞した監督だ。

 彼は新大統領誕生の4カ月前にエッセー「大統領選にトランプが勝利する5つの理由」を書いたが、誰も信じなかった。だが、現実はその見立て通りとなったのだ。

 で、最新作の「華氏119」だ。トランプ氏が米大統領選で勝利宣言をした日が2016年11月9日。それをタイトルに組み込んだ。

 冒頭、トランプ大統領誕生の瞬間の当事者たちの浮かない顔を映し出す。当人や支持者も予想しておらず、当選スピーチの用意もなかった。

 当選後のトランプ大統領の傍若無人の源を、友人であるミシガン州知事に見いだす一方、カメラはアメリカの今に目を向ける。ウエストバージニア州の教師によるストライキ、銃乱射事件に声をあげる高校生のデモ…。ヒトラーの映像にトランプ大統領の音声を重ね、両者の似た振る舞い、両時代の類似点などを暴露していく。“ドイツファースト”を掲げたヒトラー、“アメリカファースト”を掲げるトランプ大統領。今世界は悪夢のとば口にいるのか?

 一方で民主党の腐りっぷりをあぶり出す。立候補予定者に辞退を促し、党内の予備選の数字を改竄しヒラリー候補有利に導く。民主主義の国の政党とは思えない汚い手を使う。ムーア監督は容赦なく、共和党であれ民主党であれ、不正やずるさをえぐる。オバマ前大統領も格好の餌食だ。

 エンドクレジットの選曲も心憎い。ノーベル文学賞受賞者のボブ・ディランの「神が味方」。強烈な反戦歌で締めた。

 ムーア作品のほとんどを手掛ける石田泰子さんの字幕も的確でいい。聞けば、俳句の腕も達者だという。字幕と俳句-コンパクトに言葉をまとめる術で、ムーア監督が切り取る政治の言葉を分かりやすく提供する。

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