毎日快調ですか?


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出典元: 本城雅人氏
文藝春秋と講談社は23日、作家、本城雅人氏(54)の野球小説3作品の電子書籍を、24日から3週間、無料で配信すると発表した。サンケイスポーツで長く野球記者を務め、「野球を見てきたことで現在の自分がある」と語る本城氏は、新型コロナウイルスの感染拡大で野球のない日常を過ごしているファンを応援するため、自ら無料公開を申し入れた。
プロ野球には四季がある。2月のキャンプからオープン戦、3月下旬の開幕。梅雨時に交流戦、夏休みにオールスター。そして秋のクライマックス。その間、ファンは150試合を超える試合観戦を楽しむ。「どうも4月になった気がしない…」。本城氏を突き動かしたのは、野球が始まらない違和感だった。
「スタジアムでひいきのチームを応援し、野球中継を観戦して、夜のスポーツニュースや翌日の新聞を楽しみにするという、野球ファンにとっての日常が断たれました」
近鉄、オリックスの球団合併に端を発した球界再編騒動が起きた2004年。本城氏は本紙の野球遊軍記者として、大型連載で、日本プロ野球のあるべき未来像を考察した。ニューヨーク大でスポーツマーケティングを教える講師に取材し、1994~95年のストの後に大リーグの人気が急落した理由を聞いたときのことを思い出した。
「『野球が日常からなくなっても、なんてことはないんだとファンが気づいてしまったからだ』と彼は言いました」
新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期が続く。本城氏は、野球が日常からなくなることを危惧した。「野球のおかげで小説家になれた私にとって、この延期で野球が人々の身近なものではなくなってしまうことをとても憂慮しています」。恩返しのため思いついたのが、小説の無料公開だった。18日に出版社に打診し、週明けの20日には文藝春秋、講談社の協力が決まった。熱意が、出版社の垣根を越えるタッグを生んだ。
無料配信の対象は「球界消滅」「トリダシ」「スカウト・デイズ」の3作品で、無料配信期間は24日から5月14日までの3週間。本城氏は「まだしばらく我慢の時期が続きますが、野球では『ピンチの後にチャンスあり』と言います。このピンチを皆でしのぐことができたら、野球だけでなく、スポーツにも、国民にも、考えてもいなかったチャンスが訪れるのではないでしょうか」と願った。
★無料公開される本城氏の3作品
▼球界消滅(文藝春秋、2012年) もし日本プロ野球で、球団再編と、MLBへの編入が同時に起きたら…。日本球界への警鐘を鳴らすシミュレーション小説。
▼スカウト・デイズ(講談社、12年) 毎年ドラフトで隠し玉を指名する怪物スカウト。壮絶な駆け引きに満ちた世界を描いた白熱のエンターテインメント。
▼トリダシ(文藝春秋、15年) ベテランエースに引退の独占スクープを託された女性記者の原稿はなぜボツに? 臨場感あふれるスポーツ新聞の熱き現場を描く。
■本城 雅人(ほんじょう・まさと) 1965(昭和40)年6月19日生まれ、54歳。神奈川県出身。明治学院大卒。サンケイスポーツでプロ野球、競馬などを取材。2009年、松本清張賞候補となった「ノーバディノウズ」で作家デビュー。17年「ミッドナイト・ジャーナル」で吉川英治文学新人賞を受賞。18年「傍流の記者」が直木賞候補に。